優先するのは自分が抜けると止まる仕事です。
引き継ぎで全部を完璧に渡すことはできません。時間にも限りがあります。だから優先順位をつけます。基準はひとつ、自分がいなくなったときに止まってしまう業務かどうかです。
自分しか手順を知らない作業、自分だけが持っている連絡先、期限が決まっている案件。ここを先に渡します。逆に、誰でもできることや、しばらく止まっても問題ないことは後回しで構いません。
全部を渡すことはできません
引き継ぎが始まると、多くの人がこう考えます。迷惑をかけないように、全部きちんと渡さなければ。
その気持ちは分かります。でも、現実には無理です。
自分が何年もかけて覚えたことを、数週間で全部渡すことはできません。時間も足りませんし、後任にも受け取れる量に限りがあります。
だから、優先順位をつけます。
全部渡そうとして中途半端になるより、大事な部分を確実に渡すほうが、結果的に迷惑をかけません。
基準は「自分が抜けると止まるかどうか」
優先順位の決め方は、ひとつです。
自分がいなくなったときに、止まってしまう仕事かどうか。
見るポイントは4つあります。
自分しか知らないか。 手順を知っているのが自分だけの作業。ここが抜けると、誰も進められません。最優先です。
期限があるか。 進行中の案件や、決まった日にやる作業。日付が迫っているものから片付けます。
外に迷惑がかかるか。 取引先やお客様に関わる部分は、社内で済む話より重く見ます。
頻度が高いか。 毎日や毎週やっている作業は、すぐに必要になります。年に一度の作業は後回しで構いません。
この4つで並べると、何から手をつけるかが決まります。
資料に残す。口頭だけにしない
引き継ぎの中心は、書いて残すことです。
口頭で説明すると、その場では伝わった気がします。でも、聞いた側は必ず忘れます。実際にやる場面は数週間後かもしれません。そのとき手元に何もなければ、思い出せません。
資料に書くのは3つです。
手順。 何を、どの順番で、どうやるか。
関係先。 誰に連絡するのか。社内外の担当者と連絡先。過去のやり取りがどこにあるかも書いておきます。
注意点。 つまずきやすい箇所、過去に失敗したこと、書かれていないけれど守られているルール。
この3つ目がいちばん価値があります。 手順は探せば分かることもありますが、注意点は経験した人しか知りません。
「初めての人の目線」で書く
資料を書くとき、気をつけることがあります。
自分にとって当たり前のことほど、書き漏らします。
略語をそのまま使ってしまう。「いつものやつ」と書いてしまう。手順を2つ飛ばして書いてしまう。自分は分かっているので、抜けていることに気づきません。
対策はひとつです。この仕事を今日初めてやる人が読む、と思って書いてください。
書き終わったら、可能なら誰かに読んでもらうといいです。分からない箇所を指摘してもらえます。
後任がいなくても、あなたの責任ではありません
引き継ぎの相談でいちばん多いのが、これです。
後任が決まらない。
責任感の強い人ほど、自分が辞めるせいだと考えてしまいます。でも、人員の手当ては会社の仕事です。 個人が背負うことではありません。
この場合にやることは決まっています。誰が引き継いでも分かる資料を残すこと。 相手が決まっていなくても、資料は作れます。
そして、進捗と状況を上司に共有しておいてください。 資料をどこに置いたか、何が残っているか。ここまでやれば十分です。
渡せなかったものを伝えるのも、引き継ぎ
時間が足りず、全部を渡せないまま最終出社日を迎えることがあります。
そのときは、渡せていないものを正直に報告してください。
「これは説明できていません」「この作業は資料だけ残しました」と伝えておけば、残った人は困ったときに備えられます。黙って辞めると、後から発覚して混乱します。
何が残っているかを伝えることも、引き継ぎの一部です。 完璧に渡せなかったことを隠す必要はありません。
辞めたあとの連絡を、前提にしない
最後に、これは自分を守るための話です。
引き継ぎの最中に「分からないことがあったら連絡してください」と言いたくなります。親切な気持ちからです。
でも、一度応じると続きます。
新しい職場で働き始めているのに、前の会社から電話がかかってくる。新しい仕事を覚えるので精一杯の時期に、これは負担になります。
対応するかどうかは自由です。ただ、そうならない状態を作っておくほうが健全です。 資料を充実させ、置き場所を共有し、誰に聞けばいいかを整理しておく。
そして、退職前に上司と決めておいてください。 退職後の問い合わせをどうするか。ここを曖昧にしたまま辞めると、なし崩しになります。
円満に辞めることは、自分のためでもある
丁寧に引き継ぐ理由は、義理や人情だけではありません。
同じ業界にいれば、どこかでまた関わることがあります。 取引先として、あるいは同僚として。前の職場から悪い評判が伝わるのは、避けたいところです。
それに、きちんと終えたという感覚は、次の職場での立ち上がりにも影響します。後ろめたさを引きずったまま新しい仕事を始めるより、区切りをつけて入るほうが楽です。
ただし、そのために無理をする必要はありません。 優先順位をつけて、できる範囲で丁寧にやる。それで十分です。
退職までの段取りに迷ったら、相談してください。入社日との兼ね合いも含めて、一緒に整理できます。
引き継ぎの相談でよくあること
退職が決まってからの相談で、引き継ぎの範囲に悩む声があります。責任感が強い人ほど抱え込みがちです。
本人の責任ではありません。資料を残すことに集中し、上司と相談して進めます。
全部は無理だという前提で、優先順位をつけます。何を渡せていないかを伝えるのも引き継ぎです。
資料を残しておけば減らせます。連絡の扱いは、退職前に上司と決めておきましょう。
引き継ぎの流れ
最終出社日から逆算して進めます。全部を渡そうとしないことがコツです。
いまどの状況ですか
状況によって進め方が変わります。
近いものを選んでください
資料を渡すだけでなく、実際に横で一度やってもらうのが確実です。説明を聞くのと自分でやるのでは、分かる度合いが違います。
- 資料を先に渡す
- 一緒に作業する日を作る
- 質問を受ける時間を残す
優先順位をつける4つの基準
この順で見ると、何から手をつけるかが決まります。
資料に残す3つのこと
手順
何を、どの順番で、どうやるか。初めての人が読んで分かる粒度で書きます。
関係先
誰に連絡するのか。社内外の担当者名と連絡先。過去のやり取りの場所も。
注意点
つまずきやすい箇所、過去に失敗したこと、暗黙のルール。ここがいちばん価値があります。
業務を洗い出すワーク
頭の中だけだと必ず抜けます。書き出してから優先順位をつけます。
毎日やること
朝から帰るまでの流れを追うと出てきます。
定期的にやること
週次、月次、締め日の作業。カレンダーを見返します。
たまにやること
頻度は低いが自分しか知らない作業。ここが抜けやすい部分です。
引き継ぎのワークシート
この形で書けば、そのまま資料になります。
1. 担当業務の一覧
- 頻度ごとに分ける
- 抜けなく書き出す
2. 優先順位
- 止まる順に並べる
- 上位3つから着手
3. 手順と注意点
- 初めての人の目線で書く
- 当たり前のことも書く
4. 渡せていないもの
- 正直に書く
- 上司に報告する
ワークのゴール
自分がいなくても、資料を見れば誰かが続けられる状態にすることです。
全部を渡すのは無理です。渡せていないものを伝えることも、引き継ぎのうちです。
引き継ぎでよくある失敗
引き継ぎチェックリスト
チェックを入れると、抜けが見えます。保存はされません。
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この記事の作成・確認体制
よくある質問
Q. 引き継ぎはどこまでやればいいですか?
Q. 後任が決まっていない場合はどうすればいいですか?
Q. 時間が足りず全部渡せません
Q. 退職後に連絡が来たら答えるべきですか?
Q. 引き継ぎ資料には何を書けばいいですか?
退職までの進め方も相談できます。
引き継ぎの範囲や、入社日までの段取りに迷ったらご相談ください。次の準備と並行して進められます。