減っているのは求人ではなく、年齢上限をつけられる求人の種類です。
日本では、募集や採用のときに年齢で応募者を選ぶことは原則として禁止されています。それでも「経験不問・年齢上限あり」という求人が存在するのは、法律で認められた例外にあてはまる場合があるからです。その代表が、長く勤めながら技能を身につけてもらうことを目的として、職務経験を問わずに募集する育成枠です。
つまり年齢の上限をつけられるのは、経験を問わない育成枠に限られます。逆に言えば、経験を問う求人には原則として年齢の上限をつけられません。35歳前後で起きているのは、企業側の募集の設計が「育てる枠」から「役割を任せる枠」へ切り替わることであり、応募先そのものが消えるわけではありません。
「求人が減った」の正体は、検索結果の変化かもしれない
転職サイトを開いて、未経験歓迎という条件にチェックを入れる。表示される件数を見て、少ないと感じる。ここで多くの人が「もう自分の年齢では無理だ」と結論を出します。
しかし、その画面に映っているのは求人の全体ではありません。未経験歓迎という条件で絞った瞬間に、経験を前提とした求人はすべて結果から外れています。35歳以上の場合、実は外れた側にこそ応募できる求人が残っていることがあります。
同じ検索を、条件を外して職種と勤務地だけでやり直してみてください。件数が大きく変わるはずです。そのうえで、応募条件の欄を一件ずつ読んでいくと、自分に開いている入口がどれなのかが見えてきます。
なぜ年齢の上限がついた求人が存在できるのか
日本では、労働者の募集や採用にあたって年齢にかかわりない均等な機会を与えることが、事業主の義務として定められています。労働施策総合推進法の第九条がこれにあたります。原則として、年齢を理由に応募者を選ぶことはできません。
それでも「経験不問・年齢上限あり」という求人を見かけるのは、この原則に例外が設けられているからです。同法の施行規則では、いくつかの例外事由が示されています。その中でもっとも身近なのが、長期間の勤務を通じて仕事に必要な能力を身につけてもらうことを目的として、若い年齢層を期間の定めのない契約で募集・採用する場合です。
ここには条件がついています。職務の経験があることを応募の条件にしないこと、そして新しく社会に出た人と同等の処遇であることです。つまり、年齢の上限を示せる求人とは、経験を一切問わない育成前提の枠に限られるということになります。
この構造を理解すると、見え方が変わります。年齢の上限は「年齢の高い人を排除するための仕組み」ではなく、「経験を問わずに育てる枠であることの裏返し」なのです。
裏を返せば、経験者の枠に年齢の上限はつけられない
ここが、この記事でもっとも伝えたい点です。
年齢の上限を示せるのは経験を問わない枠だけなので、経験を求める求人には原則として年齢の上限をつけられません。実務経験を条件に挙げている求人は、年齢ではなく経験の中身で判断する枠だということです。
35歳を過ぎて起きているのは、応募できる企業が消えることではなく、自分が入れる枠が「年齢で線を引ける枠」から「年齢で線を引けない枠」へ移り変わることです。そして後者では、勝負するのは年齢ではなく、これまで何を任されてきたかになります。
もちろん、経験の枠には経験の枠なりの厳しさがあります。求められる中身と自分の経験が合わなければ通りません。ただ、それは年齢を理由に門前払いされているのとは性質がまったく違います。合わせにいく余地があるということです。
求人票は3つの書き方に分かれる
応募条件の書き方を見ると、企業が想定している枠が判別できます。大きく3つに分かれます。
ひとつ目は、経験を一切問わない書き方です。学歴や資格の要件だけが書かれ、業務経験には触れていません。育成前提の枠である可能性が高く、年齢の上限が併記されていることがあります。
ふたつ目は、業種の経験だけを問う書き方です。同じ業界にいた人を求めているものの、担当してきた職種は問わないという設計です。業界の知識を持ち込めるなら、職種を変える挑戦の入口になります。
みっつ目は、職種の経験を求める書き方です。担当してきた仕事の中身が問われますが、業界は問わないという求人も多くあります。同じ仕事を別の業界で続けたい人にとっては、もっとも通りやすい入口です。
自分がどの書き方の求人に該当するのかを先に決めておくと、応募先の選び方が一気に定まります。
いつまで未経験で挑戦できるのか、という問いへの答え
この問いに、何歳までという数字で答えることはできません。分野によって募集の設計が違いすぎるからです。
人手が足りていない分野では、経験よりも続けられるかどうかが重視されます。資格を取ることで段階的に役割が上がっていく分野では、入ってから資格を取る前提の募集もあります。反対に、専門性を積み上げてきた人が集まる分野では、経験のない状態からの参入は年齢に関係なく難しくなります。
そのうえで、現実的な目安をひとつ挙げるとすれば、業種と職種の両方を同時に変える形は年齢が上がるほど枠が限られ、どちらか一方だけを変える形は選択肢が残りやすい、ということです。完全なゼロからのやり直しにこだわらず、片方を残す設計にするだけで、挑戦できる期間は実質的に伸びます。
そして忘れてはいけないのは、企業が年齢そのものを嫌っているわけではないということです。企業が不安に思っているのは、任せる役割が定まらないことです。その不安に先回りして答えられれば、年齢は判断材料のひとつにすぎなくなります。
面接で年齢の話が出たときの考え方
年齢について触れられたとき、弁解から入る必要はありません。むしろ、こちらから役割の話に接続するほうが伝わります。
これまで任されてきた範囲を具体的に述べ、その中のどの部分が応募先で使えるのかを説明する。入社してからの立ち上がりをどう考えているのかを話す。この2つが伝われば、企業の側で判断ができるようになります。
逆に、前職への不満だけを話したり、年齢を理由に自分を低く見せたりすると、企業は入社後の姿を想像できません。年齢は変えられませんが、伝える中身は変えられます。
迷ったときは、切り分けから始める
年齢の不安は、考えれば考えるほど大きくなります。それは、答えの出ない問いを繰り返し考えているからです。
やるべきことは、問いを分けることです。自分はどこが未経験なのか。何を持ち込めるのか。どの書き方の求人が自分に開いているのか。この3つに分解すると、次の行動が決まります。
一人で分けきれない場合は、応募を決めていない段階でも相談できます。経歴を見ながら、どの入口が現実的かを一緒に切り分けることができます。
35歳前後の転職相談でよくある悩み
年齢を理由に諦めかけている方からの相談は少なくありません。話を聞いていくと、実際に困っているのは年齢そのものではなく、求人票の読み方と、経験の伝え方であることが多くあります。
未経験歓迎の条件で絞り込むと、経験を前提とした求人が検索結果から外れます。絞り込み条件を変えるだけで見える範囲が変わります。
業種が違うだけで職種は同じ、あるいはその逆というケースが多くあります。どの部分が未経験なのかを分けると、応募先の選び方が変わります。
実際には、任せられる役割が伝わらなかったことが理由の場合があります。経験の書き方を変えると結果が変わることがあります。
35歳以上で入口を見つけるまでの流れ
年齢が上がるほど、闇雲に応募する進め方は不利になります。先に自分の経験を分解しておくと、応募先の見極めが速くなります。
あなたに開いている入口はどれか
近い状態を選ぶと、いま現実的な入口と、次にやることが分かります。
今の希望に近いものを選んでください
業種も職種も変える形は、年齢が上がるほど枠が限られます。ただし人手が不足している分野や、社会人経験そのものを評価する分野では入口が残ります。応募先を広げるより、開いている分野を特定する方が近道です。
- 経験を問わない募集が多い分野を調べる
- 研修や資格取得の支援があるか確認する
- 入社後にどんな役割を任されるか確認する
応募できる企業が減って見える4つの理由
感覚としての「壁」を、企業側の事情に分解すると4つに整理できます。どれも年齢そのものへの評価ではありません。
35歳以上が最初に整理する3つのこと
どこが未経験なのか
業種が未経験なのか、職種が未経験なのか、その両方なのかを分けます。ここが曖昧なままだと応募先の選び方が定まりません。
持ち込める経験は何か
担当してきた範囲、責任の重さ、人に教えた経験など、分野が変わっても持ち運べるものを言葉にします。
何を優先するのか
収入、勤務地、働き方、将来の見通しのうち、今回の転職で必ず満たしたい条件を3つに絞ります。
経験の棚卸しワーク
職務経歴書に書く前に、任されていた範囲を3つの視点で洗い出します。年齢が上がるほど、この整理が結果を左右します。
任されていた範囲
自分の担当だけか、チームの分か、後工程まで見ていたか。範囲の広さは役割の説明に直結します。
人に関わった経験
後輩への指導、シフトの調整、他部署との交渉など、人を動かした経験を書き出します。
数字や品質への責任
売上、納期、在庫、安全、品質など、責任を持って管理していた指標を挙げます。
入口を特定するワークシート
頭の中だけで考えると、年齢の不安に引っ張られて判断が狭くなります。書き出して切り分けましょう。
1. これまでの業種と職種
- 会社名ではなく仕事の中身で書く
- 業種と職種を必ず分けて書く
2. 次に移りたい先
- 変えたい方と残したい方を分ける
- 両方変える場合は理由も書く
3. 持ち込める経験
- 分野が変わっても使えるものを選ぶ
- 3つに絞って優先順位をつける
4. 応募前に確認すること
- 求人票で分からない点を残す
- 相談時に聞きたいことを整理する
ワークのゴール
「未経験なので頑張ります」ではなく、「この経験を、この役割で使えます」と言える状態にすることです。
埋まらない欄は、そこが整理できていないというサインです。空欄のまま相談に持ち込んでも問題ありません。
入口が残りやすい職種を見る
分野によって、経験を問わない募集の多さは大きく変わります。仕事内容と求められる経験を確認してから応募先を絞りましょう。
35歳以上の転職でよくある失敗
応募先の見極めチェック
チェックを入れると、いまどこまで準備できているかが分かります。保存はされません。
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この記事の作成・確認体制
よくある質問
Q. 求人に年齢の上限が書かれているのは法律違反ではないのですか?
Q. 35歳を過ぎると未経験の分野には移れないのですか?
Q. 未経験でも挑戦できるのは何歳までですか?
Q. 求人票のどこを見れば自分に開いている枠か分かりますか?
Q. 年齢を理由に落とされたのか確かめる方法はありますか?
年齢を理由に諦める前に、入口を一緒に切り分けられます。
どこまでが未経験なのか、どの経験を持ち込めるのかを整理するだけで、見える求人が変わることがあります。応募を決めていない段階でも相談できます。